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不眠症とは

概要

不眠症の概要

  • 皆さんの中にも、夜熟睡できない・朝起きると身体がだるい・日中も倦怠感が続く・日中も眠い・食欲がない・体調が何となく優れないといったことはありませんか?
  • もしかしたら、不眠症が原因かもしれません。

不眠症とは睡眠障害の一種で、夜間の不眠症状かつ睡眠に関連して日中の精神・身体機能の影響を伴うことと定義されています。

それでは、不眠症状とはどのようなものでしょうか。

不眠症状とは、十分な睡眠時間を確保する時間的余裕があるにもかかわらず、眠りに落ちにくい・寝ても途中で起きてしまう・早朝に起きてしまい二度寝することができないといった症状を指します。

日中の精神・身体機能の影響とは、不眠により苦痛を感じるだけでなく、仕事・学業・日常生活が困難になっている状態を指します。

不眠症は期間により一過性不眠・短期不眠・長期不眠に分類されますが、典型的な症例では一過性不眠から増悪し、慢性期が続きます。

不眠症を放置しておくことはQOLの低下だけでなく、不眠症が年単位で継続してしまう恐れもありますので、早めの治療が重要になります。

疫学(男女比、年齢)

不眠症状は成人の30%以上に認められ、10%が不眠症に罹患しているとされています。

不眠症状のうち、入眠障害は20代以上の年齢層では20%以上、中途覚醒・早朝覚醒は特に中高年層で増加傾向が見られます。

不眠症に関する調査は様々なものがあり、一概に比較することはできませんが、およそ5人に1人が週に半分以上の頻度で不眠症状を有しており、有病率が高い疾患であると言えます。

不眠の有病率は加齢とともに増加し、女性は男性の1.4倍不眠症にかかりやすいことがわかっています。。

また、不眠の社会的要因として、収入・学歴・運動習慣・ストレスや家族歴が関係しているとされています。

加えて、不眠症は他の身体疾患と精神疾患の合併率が高い疾患であり、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、肥満、呼吸器疾患、消化器疾患、神経変性疾患、関節炎、がん、慢性疼痛との関連も見られます。

フランスで行われた調査では、不眠症は特に精神疾患との関連が深く、不眠が見られた患者のうち90%に抑うつ・不安がみられました。

また、不眠の患者がうつ病を発症するリスクは約2倍になるだけでなく、逆にうつ病の患者が不眠を発症するリスクが増加していることもわかっています。

不眠症を放置しておくリスク

不眠症を治療せずに放置しておくと、睡眠の質の低下や日中の日常生活での支障など著しいQOLの低下をまねくだけでなく、不眠症の増悪や年単位での慢性化が起こる可能性があります。

また、不眠症は身体疾患と精神疾患の合併率が高い疾患です。

身体疾患では高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、肥満、呼吸器疾患、消化器疾患、神経変性疾患、関節炎、がん、慢性疼痛との関連がみられ、精神疾患ではうつ病・双極性障害・不安障害・摂食障害・適応障害との関連がみられます。

糖尿病と歯周病の関係と同様に、うつ病と不眠もそれぞれの症状が相互に作用し、悪影響を及ぼし合うことがわかっています。

したがって、不眠症を単なる不眠だけの疾患であると捉えるのではなく、他の疾患の発症や増悪を防ぐためにも早期の治療が重要となります。

睡眠とは

睡眠は脳の過活動を防止すると同時に身体の疲労回復を行っており、生物の生命活動維持に必須の現象です。

睡眠を全くとれないようにしたラットを用いた研究では、ラットは体重減少、脱毛、皮膚損傷が生じ、最終的に自律神経異常、多臓器不全により10~20日で死亡しています。

こうした研究からも睡眠が人体にとってもいかに重要なものであるかがわかります。

睡眠のメカニズム

睡眠のメカニズムの全貌は未だ解明されていませんが、近年の研究により睡眠・覚醒の制御を担う脳幹や視床下部のニューロンの解析が進んでいます。

睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられ、レム睡眠は早い眼球の動きを伴う睡眠ノンレム睡眠は眼球がほとんど動かない睡眠を意味しています。

睡眠のサイクルは、入眠から1時間程度はレム睡眠、2時間目~4時間目ではノンレム睡眠、4時間目~6時間目はレム睡眠といったように、90~120分周期でレム睡眠、ノンレム睡眠を繰り返します。

レム睡眠は浅い睡眠であり、脳波は覚醒している状態に近いのが特徴で、筋肉活動の低下・記憶回路の成長がみられます。

夢は脳が覚醒している状態に近いレム睡眠時にみられますが、一般的に金縛りと呼ばれている現象も脳が覚醒時に近いながらも筋肉活動が低下しているレム睡眠時に起こるとされています。

ノンレム睡眠は深い睡眠であるため、脳波は覚醒時とは異なり、遅い波(デルタ波)が増えているのが特徴で、脳活動の休息・交感神経活動の休息がみられます。

脳の覚醒に関する神経伝達物質として、エピネフリン・アセチルコリン・ヒスタミン・オレキシンなどが存在します。

重度の過眠と脱力発作を症状とするナルコレプシーではオレキシンの分泌量が低下していることがわかっています。

また、脳の睡眠に関する神経伝達物質として、ウリジン・酸化型グルタチオン・プロスタグランジンD2が存在します。

原因

不眠症は不眠だけの病気ではなく、原因が他にあることも少なくありません。

生理的要因

生活習慣や睡眠時の環境に原因があります。

夜勤、周囲の騒音、暑さや寒さ、身体に合っていない寝具などが挙げられます。

心理的要因

喜怒哀楽、不安、心配事といった就寝前の感情に原因があります。

薬理学的要因

就寝前の飲食物や薬剤の副作用に原因があります。

コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインやタバコのニコチン、アルコールが挙げられます。

また、ステロイド薬、インターフェロン、パーキンソン病治療薬などが不眠症を引き起こしている場合もあります。

身体的要因

痛み、痒み、咳などの病気による症状に原因があります。

精神的要因

うつ病や統合失調症といった精神病はしばしば不眠が症状としてあらわれます。

不眠のタイプ別症状

不眠には以下の4種類のタイプがありますが、複合的に発生することもあります。

入眠障害

眠るまでに長時間かかるケースで、不眠症の中で最も多いタイプです。

中途覚醒

睡眠中に何度も目覚めてしまうケースで、高齢者に多くみられます。

また、就寝前の過剰な水分摂取や夜間頻尿が原因となっている場合があります。

早朝覚醒

予定の起床時間より早く目覚めてしまうケースで、高齢者やうつ病患者に多くみられます。

熟眠障害

時間的に十分な睡眠をとれているにも関わらず、寝た気がしないケースです。

肥満や顎異常の患者さんや、睡眠中に呼吸が抑制される睡眠時無呼吸症候群の患者さんに多く見られます。

検査・診断

問診

医療面接(問診)では、原因疾患や社会的要因などを調査します。

患者の主訴や背景の情報を得たのち、米国精神医学会が提唱するDSM-5に基づいた診断を行います。

睡眠ポリグラフィー検査

睡眠ポリグラフィー検査では、実際に患者さんに眠ってもらい、睡眠時の脳波・呼吸・心電図・筋電図・眼球運動・体温変化などを検査します。

治療

不眠症の治療は薬物療法非薬物療法に大きく分けられます。

薬物療法では飲み薬による治療を行い、非薬物療法では生活習慣の改善などを中心に治療を行います。

基本的な治療法はまず不眠の原因を精査し、非薬物療法による治療を行います。

また、不眠の原因となる社会的要因や原因疾患がある場合には、その治療を行ったのちに、非薬物療法を行います。

非薬物療法では改善が見られない場合に薬物療法を選択します。

薬物療法も非薬物療法も患者さんの協力が必要不可欠です。

薬物療法

GABA受容体作動薬

脳の興奮を抑える抑制性GABAと呼ばれる神経伝達物質の働きを増進させ、脳を眠りに近い状態にします。

効果が表れるまでの時間、効果が持続する時間に応じて、マイスリー・ハルシオン・デパスなどの薬剤が用いられます。

メラトニン受容体作動薬

メラトニンは概日リズムを調整するホルモンであり、体内時計を整えることで睡眠を促す効果があります。

代表的な薬剤にロゼレムがあります。

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシンは脳の覚醒を維持する神経伝達物質で、これが不足すると脳の覚醒を維持することが困難となり、眠り病と呼ばれるナルコレプシーなどの疾患を生じます。

オレキシン受容体拮抗薬はオレキシンの働きを阻害することで脳の覚醒状態を弱め、睡眠を促す効果があります。

代表的な薬剤にベルソムラがあります。

非薬物療法

非薬物療法には以下のような生活環境・生活習慣の改善や認知行動療法を行います。

認知行動療法

認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法の一種で、米国睡眠学会では不眠症の標準治療に位置付けられています。

不眠症の認知行動療法は、睡眠日誌の記録・睡眠衛生の学習・リラクゼーション法・眠スケジュール法の実践を行い、評価する治療法です。

下に挙げる生活環境・生活習慣の改善も認知行動療法の一種であると言えます。

定期的な運動

定期的な運動は適度な疲労感を身体に与え、入眠を促します。

ただし、ベッドに入る直前などに交感神経の作用が活発となる過度な運動(トレーニング・スポーツ)を行ってしまうと、逆に寝付けない恐れがありますので注意しましょう。

家の中でもできるストレッチなど適度な有酸素運動を習慣づけるのがおすすめです。

寝室環境

寝室環境を整えることで、入眠時・睡眠中に睡眠を妨げる余計なストレスが身体にかからなくなります。

具体的には、自分の身体に合った寝具を使用する、遮光カーテンをつける、睡眠時には消灯する、睡眠前にテレビやスマホを使用しない、寝室の温度や湿度を適温に保つ(20℃、40~70%)といったことが挙げられます。

睡眠時間

睡眠時間には個人差がありますので日中に眠気を感じない程度の時間で問題ありません。

加齢により睡眠時間は短くなりますが、6~8時間程度目安にするのが良いでしょう。

夜更かしなどをせず、十分な睡眠時間を確保できる時間帯に寝るよう心掛けることも重要です。

また、長時間の昼寝は夜中の就寝に悪影響を及ぼしますので、15時前の30分程度までにとどめておくことが良いでしょう。

規則正しい食生活

規則正しい食生活は身体の生活リズムを整えることに役立ちます。

また、空腹は睡眠の妨げになりますので、夕食後お腹が空いてしまわない時間帯に就寝することが重要です。

就寝前の飲酒・コーヒー

就寝前の飲酒は深い睡眠(ノンレム睡眠)の時間の減少に繋がり、夜中に目覚める原因となりますので控えましょう。

また、コーヒーやお茶などに含まれるカフェインは覚醒作用がありますので、就寝前には控えましょう。

就寝前の水分

就寝前に水分を取りすぎないようにしましょう。

水分の取りすぎは夜中のトイレ回数を増やすことに繋がり、睡眠の妨げになります。

就寝前の喫煙

ニコチンには覚醒作用があるため、就寝前には控えましょう。

寝床での考え事

就寝時にあれこれと悩みについて考えることはやめましょう。

怒りや不安を感じている状態では交感神経の作用が活発になり、入眠が難しくなるだけでなく、浅い眠りになり熟睡できません。

簡易チェックリスト

最後に、WHOによる「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した不眠チェックリストであるアテネ不眠尺度(AIS)をご紹介します。

下に示す各項目で、過去1カ月間に、少なくとも週3回以上経験したものを選び、各選択肢の点数を合計してください。

問1. 寝床についてから実際に眠るまで、どのくらいの時間がかかりましたか?

いつも寝つきはよい 0点

いつもより少し時間がかかった 1点

いつもよりかなり時間がかかった 2点

いつもより非常に時間がかかった、あるいは全く眠れなかった 3点

問2. 夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?

問題になるほどのことはなかった 0点

少し困ることがある 1点

かなり困っている 2点

深刻な状態、あるいは全く眠れなかった 3点

問3. 希望する起床時刻より早く目覚めて、それ以降、眠れないことはありましたか?

そのようなことはなかった 0点

少し早かった 1点

かなり早かった 2点

非常に早かった、あるいは全く眠れなかった 3点

問4. 夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?

十分である 0点

少し足りない 1点

かなり足りない 2点

全く足りない、あるいは全く眠れなかった 3点

問5. 全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?

満足している 0点

少し不満である 1点

かなり不満である 2点

非常に不満である、あるいは全く眠れなかった 3点

問6. 日中の気分は、いかがでしたか?

いつもどおり 0点

少し滅入った 1点

かなり滅入った 2点

非常に滅入った 3点

問7. 日中の身体的および精神的な活動の状態は、いかがでしたか?

いつもどおり 0点

少し低下した 1点

かなり低下した 2点

非常に低下した 3点

問8. 日中の眠気はありましたか?

全くなかった 0点

少しあった 1点

かなりあった 2点

激しかった 3点

1~3点:睡眠がとれています

4~5点:不眠症の疑いが少しあります

6点以上:不眠症の可能性が高いです

 

参考文献

http://asakura-dental.com/img/snore/pdf/pdf01.pdf

https://hachiouji-mental.com/symptom/fumin/fumin_50/

https://spc3.net/wp-content/uploads/2016/06/insomnia-1.pdf

https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/fuminkamin.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/35/1/35_66/_pdf/-char/ja

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/51/2/51_104/_pdf/-char/ja

https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890911/data/index.html

http://www.hsc-i.jp/05_chousa/doc/suimin_program/no5.pdf

http://sleep-mental-tsukuba.com/behavior-therapy/

https://www.ncnp.go.jp/cbt/guidance/about

https://haa.athuman.com/media/psychology/relax/1051/