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【認知症の知識】早期発見に有効なチェックリストを紹介「自分でリスクを把握」

認知症は深刻かつ恐い病気(症状)です。人格を失うこともありますし、「治ることはない」といわれています。

しかし、認知症を早期にみつけて、早期に治療に取りかかれば、症状の悪化を遅らせたり、現状を維持できたりします

そこで活用したいのが、自宅で自分1人でできる、認知症チェックリストです。認知症の初期に現れる症状や現象の数を数えて、多いほどリスクが高いと判定します。

3分もかからず終了します。

この記事では、東京都と大学病院が作成したそれぞれのチェックリストを紹介したうえで、なぜ認知症では早期発見、早期治療が欠かせないのか解説します。

 

2つのチェックリストの紹介

それでは、東京都福祉保健局が作成したものと、和歌山県立医科大学附属病院が作成したものの、2つのチェックリストをみてみましょう。

東京都福祉保健局が作成したチェックリストの紹介

 東京都福祉保健局が作成した「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」は、10の質問に回答して点数をつけていきます。

点が高いほど認知症リスクが高くなり、最も悪い点数は40点です。

20点以上が医療機関にかかったほうがよい目安になります。

 

  • 質問1:財布や鍵、物を置いた場所がわからなくなる

・まったくない1点・ときどきある2点・頻繁にある3点・いつもそうだ4

 

  • 質問2:5分前に聞いた話を思い出せない

・まったくない1点・ときどきある2点・頻繁にある3点・いつもそうだ4

 

  • 質問3:周りの人から「いつも同じことを尋ねる」と言われる

・まったくない1点・ときどきある2点・頻繁にある3点・いつもそうだ4

 

  • 質問4:今日が何月何日かわからないときがある

・まったくない1点・ときどきある2点・頻繁にある3点・いつもそうだ4

 

  • 質問5:言おうとした言葉が出てこない

・まったくない1点・ときどきある2点・頻繁にある3点・いつもそうだ4

 

  • 質問6:貯金の出し入れ、家賃や公共料金の支払いができる

・問題ない1点・だいたいできる2点・あまりできない3点・できない4

 

  • 質問7:1人で買い物に行くことができる

・問題ない1点・だいたいできる2点・あまりできない3点・できない4

 

  • 質問8:1人でバスや電車、自動車を使って外出できる

・問題ない1点・だいたいできる2点・あまりできない3点・できない4

 

  • 質問9:自分で掃除機やほうきをつかって掃除ができる

・問題ない1点・だいたいできる2点・あまりできない3点・できない4

 

  • 質問10:電話番号を調べて電話をかけることができる

・問題ない1点・だいたいできる2点・あまりできない3点・できない4

和歌山県立医科大学附属病院のチェックリストの紹介

続いて、和歌山県立医科大学附属病院が作成した「認知症チェックシート」をみてみましょう。こちらは、「ある」または「ない」で回答します。

以下の18項目のうち「ある」が5つ以上場合は、認知症の可能性があります。また同院は、4項目以下でも心配なら医療機関に相談して、と呼びかけています。

 

1:同じことを何回も言ったり聞いたりする

2:今話し終えたばかりなのに電話の相手の名前を忘れる

3:しまい忘れや置き忘れが増え、いつも探しものをしている

4:よく知っている人の名前を忘れる

5:ものの名前が出てこなくなった

6:簡単な計算の間違いが多くなる、いつも大きなお金で支払いをする

7:料理・片付け・運転などのミスや、蛇口・ガス栓の閉め忘れが多くなった

8:雑誌や新聞、テレビ番組の内容が理解できなくなった

9:薬の飲み忘れが多くなった

10:今日の日付や時間がわからない

11:慣れているところでも道に迷うことがある

12:約束の日時や場所を忘れたり間違えたりする

13:ささいなことで怒りっぽくなった

14:自分の失敗を人のせいにするようになったり、以前よりも疑い深くなった

15:趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった

16:身だしなみに気をかけなくなった

17:1人で外出することが減った

18:気分が落ち込みやすくなった

2つのチェックリストの違い

東京都のチェックリストが、記憶とできることを中心に尋ねているのに対し、和歌山県立医科大学附属病院のチェックリストは、記憶とできることに加えて、怒り、疑い、興味、気分といったメンタル面も尋ねています。

また、東京都のほうは1~4点で評価して、和歌山県立医科大学附属病院のほうは「ある・ない」でカウントします。

どちらがよい・悪いというわけではなく、どちらも認知症を専門に治している医師たちが作成しているので、どちらも頼りになります

 

チェックリストの使い方「印刷して医療機関へ」

いずれのチェックリストも、悪い結果が出たら即、認知症が確定するというものではありません。「認知症である」という判定と、「認知症の可能性がある」はまったく別物であり、チェックリストでわかるのは、認知症の可能性が高いかどうかです。

もし、東京都のチェックリストで20点以上、または、和歌山県立医科大学附属病院のチェックリストで5つ以上チェックしたら、チェックリストを紙に印刷して実際にチェックを入れて、それを持って医療機関を受診してみてください

精神科、神経内科、脳神経外科、物忘れ外来、認知症外来へ

認知症を診るのは、精神科、神経内科、脳神経外科、もの忘れ外来、認知症外来などです。

医療機関に電話をして、認知症かどうか心配している人を診てくれるかどうか、尋ねてみてください。

もしかかりつけ医が内科であれば、まずそちらに相談してもよいでしょう。

医療機関に行ったら、医師に「認知症チェックリストをやってみて、悪いスコアになったので心配になった」と言ってください。

 

なぜ早期発見が重要なのか

「忘れることが多くなったな」と思ったり「簡単な作業なのに失敗することが多くなったな」と思ったりしたら、先ほど紹介したチェックリストをやってみてください。

認知症は「治らない病気」と思われていて、実際、根治する治療法も薬もないとされています。しかし、症状の進行を遅らせることは可能といわれています

そこで、チェックリストをやって「もしかしたら」と思ったら、念のためクリニックや病院にかかってみてはいかがでしょうか。

医者から「何でもないでしょう」と言われれば安心できます。

そして万が一、検査で異常がみつかっても、医療のサポートを受けることができるので、やはり安心して治療に専念できます。

治らない病気だからこそ、早期発見が必要なのです。

 

認知症を引き起こす主な3つの病気を紹介

ここまで「認知症は病気」と紹介してきましたが、正確には認知症は「症状」の名称です。

原因となる病気がいくつかあって、その病気が認知症という症状を引き起こします。

ここでは、それらの病気のうち、代表的な3つの病気の概要と、それが引き起こす認知症の症状を紹介します。

アルツハイマー型認知症に特有の症状とは

 アルツハイマー型認知症は、脳に異常なタンパク質がたまって脳細胞が死滅し、脳が萎縮することで認知症を引き起こします。認知症の原因となる病気の6割はアルツハイマー型認知症といわれています。

アルツハイマー型認知症の症状の特徴は次のとおりです。

・新しく経験したことを記憶できない

・食事をしたことを忘れる

・昼か夜かも、今自分がどこにいるかもわからなくなる

・家族の顔がわからなくなる

・判断力が落ちる

・食事をつくる、お釣りを計算するといった簡単な作業ができなくなる

・徘徊する

・心理面では、無関心、妄想、抑うつ、興奮、暴力といった変化が起きる

レビー小体型認知症に特有の症状とは

レビー小体型認知症は脳の神経細胞に、レビー小体という異常なタンパク質の塊が発生することで認知症を引き起こします。

レビー小体型認知症の症状の特徴は次のとおりです。

・いないはずの人が見える、人形を人間の女の子と思う(幻視)

・眠っているときに怒鳴ったり奇声をあげたりする

・手足が震える

・小刻みに歩く

・ボーっとすることがある

・日によって調子がよくなることがある

前頭側頭型認知症に特有の症状とは

前頭側頭型認知症は原因不明の病気で、脳の前頭葉と側頭葉という部分の神経細胞が死滅することで認知症につながってしまいます。

前頭側頭型認知症の症状の特徴は次のとおりです。

・他人に配慮しない行動を取る

・店の物を断りなく取ったり、赤信号で横断したりする

・性格が変わってしまう

・こだわりが強くなり、同じ時間に同じことをしようとする

・興奮したり、衝動的な行動を取ったりする

・若い人でも発症する

 

早期に治療に取りかかれば改善が見込める

認知症は完治が難しい病気ですが、早期に治療に取りかかると症状が改善することがあります。

アリセプトという薬は、認知症の治療で頻繁に使われる薬です。

さまざまな大学の研究から、アルツハイマー型認知症の患者さんにアリセプトという薬を投与すると、次のような効果を期待できることがわかっています。

・落ち着きがみられるようになる

・会話ができるようになる

・簡単な食事の準備ができるようになる

・庭の草が伸びているのに気がついて、自分で草刈りをするようになる

・妄想、幻覚、抑うつ、不快感、不安、無関心さ、食欲が改善する

とても喜ばしい改善ですが、しかし薬には限界があります。

薬には限界がある、しかし意味がある

認知症を治すには、神経細胞を再生させたり、神経細胞の死滅を止めたりする必要がありますが、そのような薬はまだ開発されていません。

アリセプトも、神経細胞を再生することも、死滅を止めることもできません。アリセプトを飲むと一時的に改善傾向がみられるのですが、それは「傾向」にすぎず、その間も病気は進行しています。そしていつかの時点で、アリセプトの効かなくなります。

しかし、だからといって、アリセプトなどの認知症の薬に意味がないわけではありません。

なぜなら、症状が軽ければ、介護をする人たちの苦労がかなり減るからです。

例えば、徘徊しないだけでも、介護家族は、認知症の人をみないでよい時間をつくることができますし、夜中に奇声を発しないだけでも、介護家族はぐっすり眠ることができます。

薬を飲んでも認知症が進行してしまいますが、重症の期間は確実に短くすることができます。家族は、長期間の介護は無理でも、短期間の介護なら無事乗り切ることができるかもしれません。

認知症を早期に発見して早期に治療に取り掛かり、重症化を抑制して安定した状態を1日でも長くすることは、認知症に関わるすべての人にとってよいことをもたらします。

 

まとめ~知る勇気をもって

「認知症かもしれない」と思っている人ほど、チェックリストで調べたくないと思うかもしれません。

しかし、もし認知症を発症していたら、早く発見して早く治療に取りかかることは、自分にも、家族にも、関係する人にもよいことをもたらすはずです。

少しでも気になるようでしたら、知る勇気を振り絞って、チェックリストを試してみてください。