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うつ病の基礎知識 症状・原因・治療法と周囲が気をつけるべきポイント

うつ病とは

うつ病は、憂うつな気分がいつまでも晴れなかったり、何に対しても意欲や興味・喜びが感じられない状態が長く続いたりする病気です。自分を責める気持ちが強まり自殺願望を抱くケースも少なくなく、自殺の大きな要因となることが知られています。

一生のうちにうつ病にかかる人の割合(生涯罹患率)は日本では7%程度とされ、女性は男性より2倍程度うつ病にかかりやすいと言われています。

うつ病は双極性障害とともに気分障害に分類されます。双極性障害とは、うつ状態と躁状態(気分が度を超して高揚し抑制の外れた過剰な行動に走ってしまう状態)が交互に繰り返される病気です。

最初の発病でうつ病と診断された患者が、のちに躁状態を発症し、双極性障害と診断し直されるケースもあります。ただし双極性障害はうつ病に比べてまれな病気で、生涯罹患率は0.7%とされます。

うつ病の症状

うつ病の主な症状

①ほぼ毎日・一日中、憂うつな気分が続く

ショックな出来事(大きな失敗や死別など)により落ち込むことは誰にでもあることですが、時間が経つにつれ、落ち込んでばかりではなく他のことで気が紛れる時間が増えたり、日によっては一日中元気が持続したりするようになるのが普通です。

通常はこのように、出来事に反応して心が沈み、時間の経過や他の出来事により自然と癒やされます。

ところがうつ病の場合、とくに理由もなく心が沈み、周囲の状況にかかわらず憂うつが一向に晴れないという状態になります。ショックな出来事に反応して心が沈むこともありますが、通常とは異なり、周囲の状況が好転してもなかなか回復しません

②ほぼ毎日・一日中、あらゆる事柄に関して興味・意欲・喜びが湧かない

その日の気分や体調により、いつも楽しめていたことがあまり楽しめないといったことは誰にでもあります。それでも、それなりに何かに気を引かれ、何かしら楽しみを見つくろって過ごしています。そしてそのうちまたいつも通り楽しめるようになります。

一方、うつ病の場合、(ほぼ)すべての事柄に興味と意欲を失い、何をしても喜びが湧かず、病前には熱中していたようなことに対してすら意欲が一向に湧かないという状態が長く続きます。

③いつの間にか体重が減る(または増える)、ほぼ毎日食欲がない(またはありすぎる)

ダイエットをしているわけでもないのにいつの間にか体重が減ったり、以前に比べて食欲がない状態が続いたりします。人によっては逆に体重が増えたり食べ過ぎたりすることがあります。

④ほぼ毎日、十分に眠れない(または眠りすぎる)

不眠の症状(寝つきが悪い、目が覚めやすい、朝になっても回復した感じがしないなど)はうつ病患者の大半に見られます。不眠に比べると少数ですが、過眠の症状が出る人もいます

⑤ほぼ毎日、落ち着かない感じでじっとしていられない、またはぼんやりとした感じで行動が緩慢

他人から見て異常が感じられるほどに落ち着きがなくなったり、逆にぼんやりとした感じで通常ならてきぱきとこなすような動作が鈍くなったり言葉が流暢に出てこなくなったりします。

⑥ほぼ毎日、強い倦怠や気力低下を感じる

とくに理由もなく疲れてとてもだるく、気力がわかず体が重いといった状態が続きます。

⑦ほぼ毎日、自分が無価値であると感じたり、過度な(理由のない)自責の念にかられたりする

周囲の評価や実績・成績などに関係なく、しきりに自分を無価値な存在と感じたり、繰り返し過度に自分を責め続けたりします。他人から見れば根拠のないことで自分を責めることもあり、「大罪を犯してしまい、重罰を受ける定めにある」などといった妄想に発展することもあります。

⑧ほぼ毎日、思考力や集中力、決断力が低下した状態にある

考えがまとまらない、文章や言葉が頭に入ってこない、集中力が続かない、何かにつけ物事を決めかねるといった状態が続きます。

⑨しきりと死のことを考えたり、自殺を考えたりする

しきりと自分の死や自殺について考えたり、自殺の計画を立てたり、自殺を企てたりします。

うつ病の診断基準 

医療現場で用いられているうつ病の診断基準としては、アメリカ精神医学会が策定した「精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」が代表的です。

DSM-5では、上記①~⑨のうち、①または②の少なくとも1つを含む5つ以上の症状が2週間以上続き、その症状が苦痛であるか対人関係や社会生活の障害となっている場合に、うつ病と診断されます。

うつ病の原因

うつ病の原因は今のところ明確にはわかっていませんが、脳の働きや性格、ストレスなどの複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

脳の働きや性格などの違いによりうつ病へのかかりやすさには個人差があり、同じようなストレスがかかってもうつ病になる人もいればならない人もいます。また、比較的うつ病にかかりにくい人であっても、過大なストレスにさらされればうつ病を発症する恐れがあります。

うつ病と脳

脳では様々な神経伝達物質が神経細胞の間でやり取りされていますが、うつ病ではある種の神経伝達物質の働きに異常が生じていると考えられています。

それ以外にも、神経細胞の成長に関わる物質の濃度が低下していたり、記憶などに関わる海馬という部位の体積が減少していたりするなど、様々な異常がうつ病に関係している可能性が指摘され、盛んに研究が進められています。

しかし現在までのところ、うつ病の発症の仕組みを詳細に特定したり、うつ病へのかかりやすさを脳の働きの違いから明確に説明したりすることには成功していません。

うつ病になりやすい性格

うつ病になりやすい性格が存在することは昔から知られており、以下のような性格がうつ病へのかかりやすさと関係があるとされます。

  1. 真面目
  2. 責任感が強い
  3. 完璧主義・凝り性
  4. 勤勉
  5. 他人との衝突を避け、秩序や和を大事にする
  6. 他人に気を遣う

うつ病の要因となる出来事・状況

以下のような出来事・状況がうつ病の要因になることが知られています。とくに、複数の要因が重なって生じていると危険度が高まります。

  • ネガティブでショッキングな出来事(仕事・学業上の失敗、失恋、望まない離婚、死別など)
  • ポジティブながら環境の大きな変化を伴う出来事(昇進、進学、就職、重責からの解放、新築・引っ越し、結婚、妊娠・出産など)
  • 問題のある対人関係(いじめ、社会的孤立、不安定な婚姻関係など)
  • 睡眠・休息の不足、過労

複数の要因が絡み合ってうつ病が発症する仕組み

うつ病の要因となる出来事や問題のある対人関係、睡眠不足などが重なると、大きなストレスを受け続けることになります。そこで適度に力を抜いて休息すればよいのですが、真面目、責任感が強い、完璧主義といった性格を強く持っている人ほど、そうした状況でも後退せずにこれまでの活動を続けようとし、自分を追い込んでさらに疲弊させてしまいます

すると、脳の機能に異常が生じ、ものの見方が否定的になり、これまでは何とも思っていなかったことを大変なことのように感じたり、うまく物事をこなせない自分を過度に責めたり、周囲からの援助など得られるはずがないと思い込んでしまったりします。

これによりストレスや孤立、不眠はさらに深まり、ますます自分を追い込むという悪循環が生じ、否定的な捉え方気力の減退気分の落ち込みなどが常態化した状態(うつ病)にいたります。

うつ病の治療

主な治療法

ストレスとなる状況から離れ、休養する

過度なストレスはうつ病の悪循環を回すエネルギーのようなものですので、ストレスとなる状況(とくにうつ病の要因となりやすい状況)からできる限り離れ、休養をとることが重要です。

そのためには、就業時間の短縮、配置転換、休職、休学、家事負担の削減などの対処が求められます。切迫した自殺の危険がある場合や家庭が療養に適さない場合、病状の急速な進行が予測される場合などには、入院が必要になります。

うつ病になりやすい性格の人は責任感が強く、他人に迷惑をかけたくない、自分の仕事は自分でやり遂げたいという思いが強いため、こうした対処には強い抵抗感を覚えるのが通例ですが、思い切って休養するのが回復への近道です。

休職については、ストレス環境から離れて治療に専念できるというメリットがある反面、孤立した生活を送ることで症状が悪化したり、長く職場を離れることで復職が困難になったりする場合もあるため、症状の重さや個々の職場の状況などを考慮し、慎重に判断する必要があります。

薬物療法

うつ病では脳の働き方が変化してしまっているため、それを改善するため、十分な量の抗うつ薬を十分な期間服用することが中心的な治療法となります。

気分安定薬非定型抗精神病薬を併用することで抗うつ薬の効果を高める治療法(増強療法)が行われることもあります。

抗うつ薬は基本的に服用してすぐに効果が現れるというものではなく、効果をある程度実感するまでに時間がかかり、副作用もあります。主治医の指示に従い、決められた量を継続して服用することが重要です。

心理教育

患者に自分がかかっている病気がどのような病気でどのような対処が必要なのかを理解してもらい、治療のために望ましい行動をとるように促す取り組みを、心理教育といいます。適切なサポートを促すため、患者の家族などに対しても心理教育を行うことがあります。

うつ病の場合、患者は否定的な見方に大きく傾いており、自分のことを「怠けているだけのだめな人間」と捉えたり、「治療してもしかたがない、薬なんて効かない」と考えたりしがちです。そこで、うつ病がどのような悪循環によって生じ、それを断ち切るにはどのような治療が有効で、必要なのかを理解してもらいます。

ストレス状況に対して自分がどのように対処しがちか(自分の性格・行動傾向)を認識した上で、ストレスとのうまいつきあい方を模索してもらうこともあります。こうした対応を組織的に行うのが後述する認知行動療法です。

修正型電気けいれん療法

自殺の危険が切迫している場合や、抗うつ薬の効果が現れにくい場合、妄想が激しい場合などに、修正型電気けいれん療法が行われることがあります。

電気けいれん療法(ECT)とは、患者の頭皮に電極を当てて数秒間通電し、けいれんの発作を生じさせる治療法です。現在では、事前に全身麻酔を施し体のけいれんを生じさせないようにして行う修正型電気けいれん療法が用いられます。

電気けいれん療法には即効性と高い効き目が期待できるものの、頭痛、筋肉痛、一時的な認知機能障害・記憶障害、躁転(うつ状態から躁状態に転じてしまうこと)などの副作用を伴い、うつ病の症状が再発する割合が高いという難点があります。

認知行動療法

自分がどのような考えのもとで行動しているかに注目し、その考えが現実とどのように食い違っているかを把握・検証することで、より現実に適応した捉え方ができるように修正していくという治療法です。治療者との面接などを通して考えの把握と検証を行い、ホームワーク(宿題)を設定し、実生活上で実践していくといった流れで行われます。

うつ病の場合、否定的な捉え方に偏っているため、これを修正していきます。

治療の経過

うつ病の治療では、完全に治ったとまでは言えなくても、症状がある程度収まって通常の社会生活に戻ることができるようになる状態を目指します。この状態を寛解(かんかい)と呼びます。

寛解にいたっても、再発を予防するために当面の間は抗うつ薬を服用することが推奨されます。認知行動療法を併用すると再発予防効果が高まることが知られています。

どの程度の期間で寛解にいたるかは場合によりさまざまです。アメリカの研究では、抗うつ薬投与や増強療法、認知行動療法を併用して48~60週間治療を行った結果、寛解にいたった患者は全体の67%でした。

現在のところなかなか治りにくいケースがあるのが実情で、生活上の工夫や周囲のサポートなども含め、多面的な治療を試みていくことが求められます。治りにくいケースの中には、実際には双極性障害に該当し、治療方針を変更することが適切な場合も少なくないことが指摘されています。

周囲の人(家族・上司・同僚など)が気をつけるべきポイント

うつ病・患者を理解した上でサポートする

うつ病になりかけの時期や症状が高まっている時期に、患者が落ち込んでいる様子を見て周囲が励ましたり気晴らしに誘ったりすると、逆効果となりがちです。

励まされても何をがんばったらよいのか判断がつかず、周囲の期待に答えられない自分を責める気持ちになったり、気晴らしと言ってもそもそも何も楽しいと思えない状態であるのに気遣いから誘いに乗り、かえって疲れてしまったりすることがよくあります。

うつの症状が通常の気分変化とは違うということを理解した上で患者をサポートすることが重要です。

うつ病のサインに注意する

うつ病患者は発病初期に自分だけで問題を抱え込もうとし、状況を悪化させてしまいがちです。周囲の人が変化に気づけば、早期発見・早期対応につながります。

以下のような状態が見られたら、うつ病のサインかもしれません。当人の話によく耳を傾けた上で、うつ病の症状が疑われたら、医療機関会社の産業保険スタッフなどへの相談をすすめてみるのがよいでしょう。

  • これまで楽しんでやっていたことをやらなくなった
  • 表情が硬い
  • 不眠・過眠
  • 体重減少・増加
  • 落ち着きがない
  • 会話・口数が減った
  • 動作が異様に緩慢
  • 自分を否定する言動が増えた
  • 以前と違い遅刻や欠勤を頻繁にするようになった
  • 仕事の能率が歴然と下がった
  • 以前では考えられないようなミスをするようになった